2024/03/21 19:28
"Le voyage de retour"
今回のテーマ。
進むのは前だけでは面白くない。
足あとを辿る"過去への道のり"です。
これまでに、Lilyでは数々のテーマを掲げて製作をしてきました。
自分にとって興味のある分野や国々をヒントに年に2回、テーマに沿って製作するルーティンは今でも変わらずLilyの重要な製作過程の一部になっています。
節目の時を迎えたいま、立ち直り、その時には感じ得なかったであろう新たな息吹を発見したいと思い立ちました。
今回は、過去のテーマを"今"の視点から再解釈するコレクションです。
製作を始めてから十年間の歩みの中で、わたしにとって、心境、選択、環境、理解、人間関係、身体などに大きな変化がありました。
自らが望んで生んだ変化もあり、気づいたら生まれていた変化もありました。
その事について、自分なりに掘り下げてみると、ある二つのバランスが見えてきました。
一つは自分の中に無いものを理解する"柔軟な思考"と、
もう一つは自分の中の不都合な部分との対峙から生まれる"変わりたいと思う気持ち"。
この二つは歩みの中でいつでも課題となって現れては、立ち止まる機会をもらえたとても大切な要素でした。
そして、この事に対して時間をかけて理解を深めながら、しだいに私の活力となり、指針となっていきました。
変化を素直に受け入れたり、自らが変化を生み、自然と変わっていったこの期間で、こういった私の"意思"の変化は同時にブランドの確固たる"意志"となっていきました。
そうすることで、作風は常に統一感の無く、何処か落ち着きのないデザインとなって生まれてくるのだと気付きました。
この一貫性のないデザインこそがLilyの最大の個性であり、1番の愛嬌なのだと時間をかけて気付いていきました。
それまでの風に靡くような作風は移り気の好奇心から生まれるものと思っていましたが、それだけでは無いという事が分かった瞬間でした。
この大切な出来事は、
"過去は現在とは別の次元での日々"と感じていた今日において、紛れもなく繋がった時間として再認識させてくれました。
過去の自分がブランドと共に変化していく様子をここから眺めつつ、今の自分がどういう視点を持ち、再解釈していくかが今回のテーマの楽しみです。
実験的なテーマですが、同時にワクワクしています。
そして変わらずに、皆さまにもワクワクした気持ちを持ってもらえるようなモノづくりを徹底して私も自身も楽しみたいと思います。
今シーズンもどうぞ、お楽しみいただけましたら嬉しいです。