2023/05/11 11:04
たいせつなのは妥協ではなく許容
ものづくりやデザインをしていると、どこが落とし所として心地がよいか
たまにわからなくなることがあります。
これでいいか、、。と終止符を打つことはしませんが、
これでいいのか。。。?と疑問符を投げかけることは日常の様にあります。
分からなくなったときに、さらに手を進めるとドツボにハマることが多く、
いいデザインに巡り会えないということが多々あります。
そいういう時は、ささっと手を止めて、横になるなり、外へ出るなり、食事するなり、日を跨ぐなりして
全く違う事をする様に心がけています。
心がけている、、、というか、
その苦しい場から逃げるようにしています。
可愛いものを作ろうとしているのに、
その場は”一時的に”、
可愛くないものができてしまう苦しい場所なのです。
Lilyの自宅アトリエには、過去に制作して
商品として送り出すことのなかった作品が数多く眠っています。
"売れない"商品なのではなく、
"売らない"商品です。
罪なくここに留まるこの子たちには、私のそばで
私により善い作品を作る様にエールを送ってくれる役割を担ってもらっています。
たまにその缶を開けては、がんばれー!いいものできるぞ!!
という声が聞こえる様な気がして、励まされ、この子たちの仲間を”作らない”様にしなくては。
と、奮起します。
最初のころはこの通称エール隊が入った缶にもどんどんと仲間が増えつづけ、
ああ、どうしたものか。。。
と躍起になって作品を量産したこともあります。
それでもなんの解決にもならず、
そうやって作ることは、さらには作品への愛情さえも薄れることに気づき、
すぐにやめました。
作品への愛情がなくなれば、この仕事を続ける意味はないとさえ思っています。
決して極端な話ではなく、
制作への活力や、行動する原動力は、作品への愛情一本。
と言ってももう過言ではないのかもしれません。
この愛情は、手に取る人に伝わって、買ってくれる人の日常を潤わせる。
そう願って、誓って、信じて、制作している日々なのです。
どなたかが、大切に使ってくれていると思うと本当に嬉しいですし、
修理が割と頻繁な人には、ああ、毎日のようにつけてくれているんだろうな。とホッコリもします。
ともいえど、
作品作りはある意味では戦いの様な場所でもあります。
限られた材料の中からアイデアと知識をミックスし、デザインを完成させていく、
思った材料が無ければ探し、
より想像のものに合う材料を見つけて。。
イマジネーションの世界の中でいつも冒険し、戦っています。
そうやって心ゆくまで探し求め、更に時間をかけて試作したものには、決して妥協は許されず、立案から形になるまではワクワクしながらも、もどかしい日々でもあります。
いままで、そう言った割とストイックなモノづくりをしてきたと思いますし、この過程が作品への愛を生む大切な行程だとも思っています。
その作品作りの度に選択を迫られるのが、
妥協するのか、許容するのか。
と言う、際どく何かがせめぎ合うような疑問。
もちろん、妥協すると言う選択肢はありません。そこに愛は生まれませんし、そもそも納得していないものに価格をつけることが出来ません。
しかし、似て非なるこの二択はいつも私を苦しめて、その一方で、製作に対して飽きることのない刺激を与えてくれる存在でもあり、それはそれはとても扱い方がむずかしいのです。
Lilyはコレクションラインといって、
年に2回、春夏と秋冬にテーマに沿った作品をまとめて発表しています。
これは、常に飽き性の自分を奮い立たせて、刺激を与え続ける"効力抜群の栄養剤"的な存在でいて、ブランドとしても、毎回チャレンジする新しいデザインは、今後にも色々な可能性が秘められます。
それぞれにとって、絶対に無くてはならないLilyの一つの"しくみ"です。
ここで、決まるテーマ、挑戦するデザインは、その時の私の気分や、考え、時代、仕入れたものとの肌馴染み、、、が折り合って、決められています。
デザインは毎回毛色が変わるので、
ここで"妥協と許容"の選択を迫られることが多いんです。
Lilyは、モードなファッションにマッチするクラフトアクセサリーをモットーに制作しています。
これは表立って言うことではないと思っていることですが、制作の際には必ず考えながら作っている、Lilyの制作にあたって加えられるスパイスのようなモットーです。
さらに、
"やりすぎ"は禁物で、"みたことある"も作り手としては怖すぎます。
そんな色々な制限の中で、Lilyの味を出すことは、毎度容易ではなく、そんな時にどんどんとドツボにハマっていくものです。
デザインが出来上がっていくその行程の最後の最後に、決断がきます。
これはここで、"妥協"するのか、
これはここで、"許容"するのか。
私も毎度初めましてのデザイン。
終わりが設けてありません。
付け加える楽しさも知っているので、
この先の可能性が秘められた、まだ過程のこのデザインのまま、終わっていいのか。
デザインは終わりこそが、最大の決断。。
豊かな制作の中でも、苦しい時間です。
ここで終わっていいのか、
これは"妥協"ではないのか、
ここに時間を使うことがとても多いです。
完成するギリギリ前のこの時間。
ここでまた日を跨いだり、
違う作業を挟んでみたりしながら、
心地の良いデザインに削ぎ落としたり、
付け加えたりを行ったり来たりと繰り返します。
その後、折り合いのついた時に、
気持ちよく"許容"することで、
新しいデザインが誕生するのです。
天性のようにサクサクと作る方もいらっしゃるのかもしれません。
デザインが好きで好きで仕方がない私ですが、
デザインの終わり方にはいつも頭を悩ませています。
こうして、
ものづくりは今日も私を飽きさせることなく、
刺激的で、挑戦的で、永く連れ添う友達のような存在で居てくれています。
自分でもびっくりですが、
今年で10年目を迎えるものづくり。
まだまだ知らないことが多くて、勉強不足なところも多く、学びの日々ですが、
10年目には大きなお伝えごとができるように、いま奮闘中です。
デザインには決して妥協しませんが、
日々の生活には妥協ばかりのわたし。
力は入れすぎず、
日進月歩の言葉を心に、
コツコツと真面目に、進んでいきたいと思います。
ながいながーい独り言にお付き合い頂きありがとう御座いました!
また次回に!